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貸倒損失の税務要件について

 年が明け、会計事務所が一年で一番の繁忙期に突入しております。

 この時期は源泉所得税の納付、法定調書の提出や償却資産の申告など、税務手続きのイベントが山盛り(特に今年はマイナンバー対応元年…)で、また、税制改正についての問合せも徐々にいただきはじめています。そしてさらには12月決算法人の決算業務のピーク(こちらが主ですが)も重なる時期であります。

 決算事前対応、決算処理にあたってご相談が多い事項のひとつに、「債権の貸倒処理の可否」があります。
 流動化・証券化といった案件におきましても、債務不履行となった貸付債権(金銭債権案件)や、退去テナントとの間の長期滞留賃料債権(不動産案件)などについて、「貸倒損失をいつ計上するか」、「計上した貸倒損失が税務上認められるか」といったご質問を受けることが多くございます。


 税務上の貸倒損失の計上基準については法人税法基本通達に以下の3つの態様が挙げられています。

「法律上の貸倒れ」

 債権の全部又は一部が法的な手続き(更生計画認可の決定や特別清算に係る協定の認可の決定など)によって切り捨てられた場合、その切り捨てられた金額は、その事実が発生した日の属する事業年度において損金の額に算入されます。


「事実上の貸倒れ」

 債権が法律上には消滅していないが、その債権に係る担保処分後の全額が、その債務者の資産状況、支払能力等からみて回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして経理処理し、損金の額に算入することが認められています。


「形式上の貸倒れ」

 売掛金等の営業債権(売掛債権)について、債務者との取引停止後1年以上経過したなどの場合には、その売掛債権の額から備忘価額(通常1円)を控除した残額を貸倒れとして経理処理し、損金の額に算入することが認められています。


 いずれの場合にも、債務者の状態や回収努力の経緯など、貸倒れと認められるだけの「事実関係」があったことを客観的な証拠により具体的に立証する必要があり、ご相談の多くはこの点についてとなります。
 また、損金として認められるための「手続き」も異なっていますが、留意点を一つ挙げますと、「法律上の貸倒れ」については、法的に債権の消滅が確定した時点(事実の発生した日)において損失計上が「強制」されていることです。
 たとえば、債権の精査をしてみたら債務者が前期より以前にすでに倒産手続きを完了して消滅していたことが発覚したといった場合には、消滅した事実があった日の属する期(前期以前)において(貸倒れの経理をしていなくとも)損金計上が強制されてしまいます。その事実を認識しながらも貸倒れに係る経理処理を翌期以降へ繰り延べた場合にも同様の扱いとなります。

 なお、貸倒れによる損失計上が認められない場合でも、貸倒引当金の計上により税務上損金を計上することができる可能性もあります。要件についてはお気軽にお問合せください。
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  • 税理士
  • 井出 清彦

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