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続・アメリカ税制改正

2017 年 12 月に成立したアメリカ税制改正項目を眺めてみると、法人税率の大幅の引き下げ、資本参加免税の導入などアメリカ本国での事業投資に関し優遇措置が図られる一方で、支払利息損金算入制限、グローバル無形資産低課税所得(Global Intangible Low-Taxed Income:GILTI)、税源浸食濫用防止税(Base Erosion and Anti Abuse Tax:BEAT)の導入によりアメリカ本国からの所得移転に関する制限措置が強化されるなど、アメリカへのインバウンド投資に有利に働く改正内容となっています。今回はアメリカ税制改正が及ぼす影響について見ていきます。

従前アメリカの法人税率は35%と日本の外国子会社合算税制の租税負担割合20%を上回り、アメリカ子会社について外国子会社合算税制を特段検討する必要がありませんでした。SPC のような資産保有会社でも外国子会社合算税制の適用を受けることなく、日本の親会社とは切り離された課税関係でしたが、アメリカ税制改正の結果、事業実態の乏しい資産保有会社などのアメリカ子会社は外国子会社合算課税の適用を受けるものと想定されます。

外国関係会社の平成 30 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から外国関係会社が「ペーパーカンパニー」や「キャッシュボックス」(法令上「特定外国関係会社」)に該当した場合において、その租税負担割合が 30%未満のときは、外国子会社合算税制が適用を受けることになります。アメリカの改正後法人税率が 21%へ引き下げられたため、アメリカ子会社についても特定外国関係会社に該当するかの判定が必要になりました。
 なお改正後の税率の適用については日本の事業年度単位の適用とは異なり、2018 年 1 月以降から適用されます。暦年事業年度でない場合は日割計算による加重平均した税率が適用されます。2017 年 4 月~2018 年 3 月の事業年度の場合は以下の税率になります。

加重平均税率:35%×275 日/365 日 + 21%×90 日/365 日=約 31.5%

ペーパーカンパニーとは、次のいずれにも該当しない外国関係会社と規定されています。

1. 実体基準:
主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有している
2. 管理支配基準:
本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っている

日本法人が 100%子会社である USLLC を通じてアメリカの賃貸不動産に投資するケースを考えてみます。USLLC の主たる事業が賃貸不動産業であれば、実体基準を満たすためには、USLLC が賃貸不動産事業を行うに必要と認められる固定施設を有していることが必要です。固定施設は事業活動を伴った物的設備と考えられ、所有あるいは賃貸のいずれでも認められますが、賃貸不動産事業に供されている賃貸不動産そのものは賃貸人の居住等に供されるもので事業活動を行う施設ではないため、実体基準の固定施設には該当しません。そのため実体基準を満たすためには、賃貸不動産事業に必要と認められる営業や契約、管理などを行う事務所等の固定施設が必要となります。
 一方、管理支配基準は外国関係会社が親会社から独立した子会社である実体があるかどうかを判定する基準となりますので、会社が本来持っている機能である株主総会及び取締役会等の開催、事業計画の策定、役員等の職務執行、会計帳簿の作成保管などを総合勘案して、その外国関係会社がその本店所在地国で自ら事業管理等を行っている必要があります。USLLC の賃貸不動産事業に関する意思決定のほとんどが日本の親会社で行われるような状況では、子会社管理方針の変更などの対策が必要です。
 更にペーパーカンパニーについては、税務当局が実体基準又は管理支配基準の要件を満たすことを証する書類等の提出を求めた場合に、その提出がない場合には実体基準又は管理支配基準に該当しないものと推定されますので、文書管理の面でも今まで以上に留意を要します。

キャッシュボックスとは、次のいずれにも該当する外国関係会社と規定されています。

1. 受動的所得基準:
総資産に対する受動所得の割合>30%
2. 資産基準:
総資産に対する有価証券、貸付金、貸付用固定資産、無形資産等の合計額の割合>50%

上記のペーパーカンパニーの要件に該当しない場合でも、有価証券配当や特許権などの無形資産収入が大きいケースではキャッシュボックスの要件に該当し、外国子会社合算税制の適用が想定されます。アメリカ子会社で特許管理をしているケースでは、アメリカの税制改正で導入された国外無形資産所得(Foreign-Derived Intangible Income:FDII)控除というアメリカでの優遇措置の適用と同時に、日本の外国子会社合算税制が適用される場面も想定され、事業ストラクチャーの再検討が必要になると考えられます。

参考情報
Tax Cuts and Job Acts に関する Clayton & McKervey のニュースレター
https://claytonmckervey.com/insights/

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アメリカ税制改正

 2017 年12 月にアメリカで税制改革法案「Tax Cuts and Job Acts」が成立しました。法人税率が35%から21%へと大幅な引き下げを含む改正は、アメリカで事業を行っている日系企業にとって、また、本税制改正を機にアメリカへの事業進出を検討する日系企業にとっても大きな関心事かと思われ、本ブログにおいて数回にわたり改正内容を見ていきます。今回は法人税及び国際課税に関する主要な改正項目の概要を確認します。なお本記載内容は弊事務所が加盟するPrime Global のメンバファームであるClayton & McKervey(https://claytonmckervey.com/)のニュースレターに編集及びコメントをしております。

  1. 法人税関連の主要改正項目概要
    1. 法人税率の引き下げ

      最高35%の累進税率が適用される法人税率が、2018 年度より一律21%へ引き下げ。

    2. 20%税率のAMT(Alternative Minimum

      Tax:代替ミニマム税)廃止通常の法人税と各種優遇措置を所得計算上考慮せず計算したAMT のいずれか高い税額を納付する仕組みとなっていましたが、法人税率の引き下げにより2018 年度よりAMT は廃止されました。

    3. 特定の固定資産の即時償却

      2017 年9 月27 日以降に取得した特定の固定資産について100%即時償却が適用され、2022 年度まで継続されます。2023 年から段階的に償却率が減少していきます。

    4. 支払利息の損金算入制限

      過大支払利子税制に替わり、支払利息の控除制限が設けられました。制限額は受取利息+調整後課税所得(EBITDA)の30%の合計額となり、制限された支払利息は無期限の繰越が可能となります。

    5. 国内生産活動控除の廃止

      国内生産者に与えられていた適格米国生産活動利益の9%控除が廃止されました。

    6. 繰越欠損金(NOL)の繰越期限及び使用制限

      繰越欠損金の繰越期限が20年から無期限に延長される一方、繰越欠損金の繰戻還付制度は廃止されました。また繰越欠損金の控除額は課税所得の80%に制限されました。

    7. 研究開発費の資本化償却

      研究開発費は発生年度に即時費用化することができますが、2022 年以降の課税年度から研究開発費は資本化が強制され、その後5 年間(米国外の研究開発費は15 年間)で償却されます。

  2. 国際課税関連の主要改正項目概要
    1. 資本参加免税の導入

      従前は全世界所得課税方式により外国からの配当金についても35%の法人税率により法人税が課税されたのち、外国税額控除制度により二重課税を調整する課税方式でしたが、米国法人が10%以上の株式を保有する外国法人(10%外国法人)から受領する配当については免税所得となります。保有期間として配当支払日の365 日前から731日間に継続して365 日を超えて10%外国法人の株式を保有する必要があります。なお米国源泉の配当、配当支払国で損金算入となる配当は適用されません。

    2. 国外未配当利益に対する強制課税

      資本参加免税の導入に伴い、海外子会社に留保されている未配当利益については配当されたものとみなして一定の適用税率により一時に課税されます。

    3. グローバル無形資産低課税所得(Global Intangible Low-Taxed Income:GILTI)の導入

      無形資産の国外移転を防止する目的で導入され、特定外国子会社(CFC)の課税対象所得のうち、CFC の超過収益所得をアメリカ株主の所得に合算します。

    4. 国外無形資産所得(Foreign-Derived Intangible Income:FDII)控除の導入

      輸出関連企業への優遇措置として導入され、無形資産を所有する米国法人が獲得したFDII につき37.5%の所得控除を認める制度です。FDII に対する実効税率は13.125%((1-37.5%)×21%)と優遇されます。2026 年以降の所得控除率は21.875%に減少します。

    5. 税源浸食濫用防止税(Base Erosion and Anti Abuse Tax:BEAT)の導入

      大規模な多国籍企業(過去3 年間のグループの平均総収入が5 億ドルを超え、かつ、税源浸食率が3%以上もの)について、下記計算に基づく追加課税が導入されました。
      ① 修正課税所得(通常課税所得+税源浸食支払)×10%
      ② 通常法人税額(一定の税額控除適用前の税額。2026 年以降は税額控除適用後税額)
      ③ BEAT=①-②

参考情報
Tax Cuts and Job Acts に関する Clayton & McKervey のニュースレター
https://claytonmckervey.com/insights/

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同族会社が発行する私募債に係る利子の取扱いについて

平成25年度税制改正により、少人数私募債の利子が源泉分離課税から総合課税の対象とされ、平成28年1月1日以後に支払われる利子から取扱いが変わりました。漠然と「同族会社の役員が受け取る私募債の利子=総合課税の対象」というイメージを持っていたのですが、実際には「役員かどうか」が判定基準ではありません。今回はその点について、具体例をまじえてご紹介します。

1.少人数私募債の利子の取扱い

同族会社が発行する少人数私募債の利子で、個人に対して支払われるものの取扱いは以下のようになります。

(1) その同族会社の判定の基礎となった株主等が支払いを受けるもの

支払時の源泉徴収 所得税15.315%(利子割は徴収不要)
所得税確定申告 総合課税として申告が必要

(2) 上記(1)以外の者が支払いを受けるもの

支払時の源泉徴収 所得税15.315%及び利子割5%
所得税確定申告 源泉分離課税により課税関係が完結するため申告は不要

ここで注意したい点は、総合課税の対象となる(1)の「同族会社の判定の基礎となった株主等」の範囲です。「同族会社判定の基礎となった株主等」とは、「特定個人」と「その親族等」と規定されていて、特定個人に該当するかどうかは、その同族会社の第1順位から第3順位の株主グループの所有割合の状況と、その人がどの株主グループに属しているかにより決まります(下記2参照)。

2.総合課税の対象範囲

(1) 特定個人

株主グループの所有割合の状況 特定個人
第1順位の株主グループの所有割合が50%超となる場合 第1順位の株主グループに属している株主等
第1順位と第2順位の株主グループの所有割合を合計した場合にその所有割合がはじめて50%超となるとき 第1順位又は第2順位の株主グループに属している株主等
第1順位から第3順位までの株主グループの所有割合を合計した場合にはじめて50%超となるとき 第1順位から第3順位のまでのいずれかの株主グループに属している株主等

(2) 特定個人の親族等

① 特定個人の親族
② 特定個人と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
③ 特定個人の使用人
④ 上記①~③以外の者で、特定個人から受ける金銭等により生計を維持しているもの
⑤ 上記②~④の者と生計を一にするこれらの者の親族

3.具定例

(1) 前提

  1. X社:資本金1,000万円(100株/@10万円)で同族会社
  2. 株主構成
    ・代表取締役A氏 700万円(70株)
    ・取締役B氏 150万円(15株)
    ・取締役C氏 150万円(15株)
     ※A氏、B氏、C氏は親族等の関係にありません。
  3. X社は、平成27年3月に利付少人数私募債3千万円を発行しています。当該私募債はA氏、B氏、C氏が引き受けており、年2回、私募債に係る利息を受領しています。

(2) 特定個人の判定

A氏の所有割合が70%ですので、第1順位の株主グループの所有割合が50%超となります。したがって、第1順位の株主グループに属するA氏は特定個人に該当しますが、B氏及びC氏は特定個人には該当しないことになります。

(3) 利子の取扱い

支払時の源泉徴収 所得税確定申告
A氏 所得税15.315% 必要(総合課税)
B氏、C氏 所得税15.315%及び利子割5% 不要(源泉分離課税)

なお、上記例で、株主構成が下記の場合は、第1順位と第2順位の株主グループの所有割合の合計ではじめて50%超となりますので、第1順位と第2順位の株主グループに属するA氏とB氏が特定個人に該当し、C氏は特定個人には該当しないことになります。

  1. 株主構成
    ・代表取締役A氏 400万円(所有割合40%)
    ・取締役B氏 400万円(所有割合40%)
    ・取締役C氏 200万円(所有割合20%)

参考条文:租税特別措置法第3条第1項、同法施行令第1条の4第3項、同法施行規則第2条第2項

  • ファイナンシャルビジネスサービスAグループ
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  • 岩崎 貴子

地域経済を牽引する企業向けの設備投資促進税制の創設

平成29年度税制改正に関する「所得税法等の一部を改正する等の法律案」が平成29年2月3日に閣議決定され、国会に提出されました。

このたびの改正で地域経済を牽引する企業向けの設備投資促進税制の創設が盛り込まれていますので、紹介させていただきます。

本税制は、経済の成長力の底上げのために創設されたものであり、地域経済を牽引する地域中核企業による地域経済に波及効果のある高い先進性を有する新たな事業への設備投資に対して特別償却又は税額控除ができる制度となります。
対象事業のイメージとしては、地域固有の強みを生かした事業を想定しており、医療機器、航空機等の先端技術を活かした成長ものづくり分野、ビッグデータ、AI等の第4次産業革命関連分野、農水産品の海外市場獲得等の食関連・地域商社、新たなニーズをターゲットにした観光・商業、スポーツ活用ビジネスなどだそうです。

本税制は、
  1. 青色申告書を提出する事業者で「地域経済牽引事業の促進により地域の成長の基盤強化に関する法律」に基づき承認を得ている地域経済牽引事業者であること
  2. 「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律」で規定される地域経済牽引事業の促進地域内において、特定地域経済牽引事業施設等(取得価額が2,000万円以上のもの)を新設又増設したこと(注1)
  3. 特定地域経済牽引事業施設等を構成する機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物の取得等をして、事業の用に供したこと
を要件とし、次の特別償却又は税額控除を選択適用が出来ることとなります。

対象設備 特別償却 税額控除
機械装置・器具備品 取得価額の40% 取得価額の4%
建物・建物附属設備・構築物 取得価額の20% 取得価額の2%

※対象資産の取得価額の合計額は100億円、税額控除額については、当期の税額の20%を限度となります。
特別償却については、所有権移転外リース取引により取得した特定事業用機械等は適用除外となります。

(注1)「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律」の改正する法律案は平成29年2月28日に閣議決定され、国会に提出されています。

なお、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の改正を前提に、同法の改正法の施行の日から平成31年3月31日までの期間に適用をされます。また、特別償却の適用には、確定申告書等に償却限度額の計算書に関する明細書の添付明細の添付が必要とされ、税額控除の適用には、確定申告書等に取得価額、控除を受ける金額及び金額の計算に関する明細を記載した書類の添付が必要となります。
  • パートナー
  • 執行役員
  • 税理士
  • 池田 桂子

貸倒引当金の論点について

前回のブログでは貸倒損失の税務についてお話しさせていただきましたが、今回は関連の深い貸倒引当金について触れてみたいと思います。

金融商品会計基準上、貸借対照表に計上される金銭債権に付すべき金額は、債権の額からその種類に応じて定められた方法により適正に見積もられた「貸倒見積高」を控除したものとされており、企業の財政状態および経営成績を適切に表示するため、貸倒引当金の計上が求められています。また、「貸倒見積高」の算定方法について、特に問題が発生していない「正常債権」、貸倒リスクが高い「貸倒懸念債権」および債務者が破たん等している「破産更生債権等」の三つに債権を区分し、それぞれにその方法を定めています。

一方、法人税法では、債務確定基準による損金(費用および損失)の認識、課税の公平性の確保といった点から、貸倒引当金をはじめとする「引当金」の計上を原則として認めていません。
例外として、金融機関などの一定の業種並びに大会社及びその完全子会社に該当しない一定の中小法人については、貸倒引当金に繰り入れられた金額のうち「特段の定め」により算定された繰入限度額までの金額を損金算入することが認められています。
(残念ながら特定目的会社(TMK)は引当金繰入額の損金算入が認められている法人には該当しません。)
また、貸倒引当金繰入額の「損金算入限度額」については、貸倒リスクの高い「個別評価債権」と正常債権ともいわれる「一括評価債権」の二つに債権を区分し、それぞれにその計算方法を定めています。

以上のことからもわかりますように、会計と税務では貸倒引当金の計上が認められる法人の範囲と、認識される引当金の計算方法が異なっているためその経理処理に乖離が起きます。いわゆる「税会不一致」の代表例と言えるかと思います。

また、貸倒引当金でよく問題となるのが、個別評価金銭債権に該当するか否かの判断や、担保権や個人保証等により回収の見込があるか否かの判断かと思われます。以下、個別評価金銭債権とされる債権について主なものをあげてみます。


「長期棚上債権」

会社更生法の規定による更生計画認可の決定などの「特定事由」によりその弁済を猶予され、または賦払により弁済されるもの。
5年を経過する日までに弁済を受けることができない部分(担保権の実行等で回収見込がある部分はのぞきます)が貸倒引当金への繰入限度額となります。


「債務超過状態の継続による一部回収不能見込額」

債務超過の状態が相当期間(概ね1年以上とされています)継続し、かつ、一定の事由により、その一部につき担保権の実行等によっても回収の見込みがないと認められるもの。
当該回収不能見込み額が貸倒引当金への繰入限度額となります。


「形式基準による50%引当」

会社更生法の規定による更生手続開始の申立て、破産法の規定による破産の申立て、あるいは手形交換所による取引停止処分などの事実があったもの。
実質的な債権の金額から取り立て等の見込みがある部分を除いた金額の50%相当額が貸倒引当金への繰入限度額となります。


個別評価金銭債権については、それが認められるだけの事実が生じていることを、客観的な資料によって貸倒損失の実務と同様に立証する必要があります。また、確定申告書に引当金繰入限度額の計算に関する事項を記載する必要(申告書記載要件)があります。
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貸倒損失の税務要件について

 年が明け、会計事務所が一年で一番の繁忙期に突入しております。

 この時期は源泉所得税の納付、法定調書の提出や償却資産の申告など、税務手続きのイベントが山盛り(特に今年はマイナンバー対応元年…)で、また、税制改正についての問合せも徐々にいただきはじめています。そしてさらには12月決算法人の決算業務のピーク(こちらが主ですが)も重なる時期であります。

 決算事前対応、決算処理にあたってご相談が多い事項のひとつに、「債権の貸倒処理の可否」があります。
 流動化・証券化といった案件におきましても、債務不履行となった貸付債権(金銭債権案件)や、退去テナントとの間の長期滞留賃料債権(不動産案件)などについて、「貸倒損失をいつ計上するか」、「計上した貸倒損失が税務上認められるか」といったご質問を受けることが多くございます。


 税務上の貸倒損失の計上基準については法人税法基本通達に以下の3つの態様が挙げられています。

「法律上の貸倒れ」

 債権の全部又は一部が法的な手続き(更生計画認可の決定や特別清算に係る協定の認可の決定など)によって切り捨てられた場合、その切り捨てられた金額は、その事実が発生した日の属する事業年度において損金の額に算入されます。


「事実上の貸倒れ」

 債権が法律上には消滅していないが、その債権に係る担保処分後の全額が、その債務者の資産状況、支払能力等からみて回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして経理処理し、損金の額に算入することが認められています。


「形式上の貸倒れ」

 売掛金等の営業債権(売掛債権)について、債務者との取引停止後1年以上経過したなどの場合には、その売掛債権の額から備忘価額(通常1円)を控除した残額を貸倒れとして経理処理し、損金の額に算入することが認められています。


 いずれの場合にも、債務者の状態や回収努力の経緯など、貸倒れと認められるだけの「事実関係」があったことを客観的な証拠により具体的に立証する必要があり、ご相談の多くはこの点についてとなります。
 また、損金として認められるための「手続き」も異なっていますが、留意点を一つ挙げますと、「法律上の貸倒れ」については、法的に債権の消滅が確定した時点(事実の発生した日)において損失計上が「強制」されていることです。
 たとえば、債権の精査をしてみたら債務者が前期より以前にすでに倒産手続きを完了して消滅していたことが発覚したといった場合には、消滅した事実があった日の属する期(前期以前)において(貸倒れの経理をしていなくとも)損金計上が強制されてしまいます。その事実を認識しながらも貸倒れに係る経理処理を翌期以降へ繰り延べた場合にも同様の扱いとなります。

 なお、貸倒れによる損失計上が認められない場合でも、貸倒引当金の計上により税務上損金を計上することができる可能性もあります。要件についてはお気軽にお問合せください。
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平成29年度税制改正大綱が発表されました

今年もあっという間に終わりが近づいてまいりました。
この一年でできたこと、できなかったこと。来年こそはと思うこと。様々ですが、皆さんはどのような思いで年の瀬を迎えられていらっしゃるでしょうか。

この時期は政府与党から来年度の税制改正大綱が発表される時期でもあります。今年も今月8日に「平成29年度税制改正大綱」が発表され、弊事務所でも税制改正への対応について検討をスタートいたしました。

今回も多種多様にわたる改正が盛り込まれていますが、
  1. 個人課税改革の第一弾として配偶者控除・配偶者特別控除の見直し
  2. 中堅・中小事業者の支援策として投資促進税制の拡充
  3. 近年の国際課税改革(BEPS対応)の一環として外国子会社合算税制の見直し
などに注目しております。

とくに外国子会社合算税制(タックスヘイブン(TH)対策税制)については抜本的な見直しとなるようで、既存の対応策についての見直しや新たに対応が必要となる事項も出てくることが考えられます。

主な改正内容としましては、TH対策税制の対象について、「子会社の租税負担割合や事業実態の有無といった『会社の外形』によって判断するアプローチから、個々の所得の内容や稼得方法といった『所得の内容』に応じて把握するアプローチへ」と改められております。また、租税負担割合が30%未満である外国関係会社で一定の要件に該当するものについては、親会社の申告時に当該外国関係会社の財務諸表等の添付による報告義務などが新たに課されています。

今後、法案としてさらに具体化されてまいりますが、別の機会にご紹介ができればと考えております。

今年一年、多くの方々から支えられ、ご愛顧を賜ってまいりました。この場をお借りしてお礼申し上げます。たいへんにありがとうございました。
来年もまた頑張って精進して参りますので、あたたかいご指導の程よろしくお願い申し上げます。
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医療費控除の特例(OTC医薬品)について

もう数日もしないうちに師走になりまして、あっという間に年の瀬を迎えます。税の世界では年末調整、法定調書、償却資産、さらに12月決算法人から個人確定申告、3月決算法人とイベントが続く時期がスタートします。 また、来年度の税制改正についても税制調査会での議論が本格化し始めております。来年度改正の目玉はいくつかありますが、個人的には所得税の所得控除制度がどう改正されるかが気になるところです。

その前に今年度制定された改正法で来年以降からスタートするもの、で役に立ちそうなものを一つご紹介いたします。個人所得税の医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」というものがスタートします。

これは、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、定期健康診断等を行っている個人が、スイッチOTC医薬品を購入した際にその購入費用について所得控除を受けることができるものです。

この「スイッチOTC医薬品」とは何かといいますと、「要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品」のことで、厚生省が指定する成分(全部で82あります。)を含むものを指します。

そして制度の対象となるのは、一年間の購入金額が1万2千円を超える部分(8万8千円が上限となります。)で、その超える部分の金額が所得の金額から控除されます。

また、スイッチOTC医薬品は従来の医療費控除の対象となる医薬品の購入にも該当しますので、他の医療費と合算した金額が10万円を超えるような場合には、従来の医療費控除とどちらか得なほうを選択して申告することが可能です(併用はできません。)。

従来の医療費控除は10万円を超える部分とハードルが高かったのですが、この制度なら今までより気軽に医療費控除制度を利用することができるかと思われます。

この特例についての詳しい内容や対象となる成分、品目については厚生労働省のホームページに案内がありますので参考になさってください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html

まずは医者にも薬にもお世話にならないことが一番ですが、いざとなったときにはこの制度のことを思い起こしていただければ幸いです。
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利子割の改正

既にご存じの方も多いと思いますが、平成25年度の税制改正により平成28年1月1日以後に支払いを受けるものから、利子について課される利子割の取扱いが変わりました。
まず、法人が受け取る利子については、平成28年1月1日以後に支払いを受けるものから利子割は徴収されないこととなりました。

利子の支払額や源泉徴収税額等の通知を受けていれば間違えることはないでしょうが、銀行の預金利息等について、入金額から割り戻して利息額を計算する場合には、利子割の5%を含めないで計算するよう注意が必要です。

また、個人が支払いを受ける利子については、平成28年1月1日以後に支払いを受けるものから、国債、地方債や上場公社債等の利子は、「特定公社債等の利子」として配当割が課されることとなり、「特定公社債等」以外の利子は、「一般公社債等の利子」として利子割が課されることとなりました。

配当割も利子割も、5%の税率で特別徴収されることは同じですが、配当割の申告納入先が支払いを受ける人の住所地であるのに対し、利子割の申告納入先は支払をする会社の事務所等の所在地であり、申告納入先が異なります。本来、利子割として申告納入すべきものを配当割として申告納入してしまったり、特別徴収する必要のないものについて申告納入してしまった場合には、申告納入した会社において還付請求の手続きが必要となります。


同族会社などの中小企業については、利子割の特別徴収義務者となるケースはそれほど多くはないと思いますが、少人数私募債を発行している場合には利子の支払時に特別徴収義務が生じます。

私募債の利子については所得税の課税方式が源泉分離課税であったため、総合課税による税率と分離課税による税率との差による節税策として用いられていましたが、平成25年度の税制改正により、同族会社が発行した社債の利子で同族会社の判定の基礎となった株主等が支払いを受けるものは総合課税の対象とされることとなり、この節税策は封じられることとなりました。

少人数私募債の利子についても、平成28年1月1日以後に支払われるものから取扱いが変わっていますが、この変更後の取扱いが少しわかりにくくなっています。
まず、原則的な取扱いとしては、少人数私募債の発行年月日によってそれぞれ次の取扱いとなります。

<平成27年12月31日以前発行分>

「特定公社債等の利子」として、配当割課税

<平成28年1月1日以後発行分>

「一般公社債等の利子」として、利子割課税

つまり、平成27年12月31日以前に発行したものに係る利子については、5%の税率で特別徴収して、支払いを受ける人の住所地に配当割を納入し、平成28年1月1日以後に発行したものに係る利子については、5%の税率で特別徴収して、発行会社の事務所等の住所地に利子割を納入することになります。

これだけであればとくに難しくはありませんが、発行者が同族会社である場合には、上記の取扱いとはならず、私募債の発行年月日にかかわらず、一律「一般公社債等の利子」として利子割課税の対象となります。

さらに、同族会社が発行した私募債に係る利子のうち、所得税で総合課税の対象となる同族会社の判定の基礎となった株主等が支払いを受けるものについては、利子割も配当割も徴収されないこととなります。
この場合、所得税の確定申告をすることによって、住民税の所得割が課税されることとなります。

以上、平成28年1月1日以後に同族会社が支払う私募債の利子についての源泉徴収や特別徴収の取り扱いをまとめると、下記のようになります。

<法人に対する支払い>

所得税(復興特別所得税含む)15.315%を徴収(利子割は徴収不要)

<個人に対する支払い>

  • 同族会社の判定の基礎となった株主等の場合

    所得税(復興特別所得税含む)15.315%を徴収(利子割は徴収不要)

  • 上記以外の場合

    所得税(復興特別所得税含む)15.315%及び利子割5%を徴収

節税策として私募債を発行していた同族会社の場合は、支払先が同族会社の判定の基礎となった株主等に該当するケースが多いと考えられますが、私募債の利子を支払う場合には、支払者は同族会社かどうか、同族会社である場合には、支払の相手先が誰であるかの確認が必要です。

  • 国際税務グループ
  • グループマネージャー
  • 税理士
  • 安田 智之

消費税の免税点制度及び簡易課税制度の適用制限

平成28年度の税制改正において、免税点制度及び簡易課税制度が適用されない場合として、高額特定資産を取得した場合が追加されました。免税点制度や簡易課税制度は、小規模零細事業者の事務負担や徴税コストに配慮する観点から設けられているものですが、その趣旨に沿わない利用(いわゆる消費税還付スキームなど)に対処するため、ここ数年で次々と見直しが行われています。免税点制度及び簡易課税制度の主な適用制限についてまとめると次のようになります。

  • 免税点制度とは

    零細事業者の事務処理能力や徴税コストなどを考慮して、基準期間(*1)の課税売上高が1千万円以下の事業者(基準期間がない場合も含む)について納税義務を免除する制度をいいます。
  • 簡易課税制度とは

    消費税は本来、課税売上に係る消費税額から、課税仕入れに係る消費税額を控除して納税額を計算します(原則課税または一般課税といいます)。ただし、中小事業者の事務負担を考慮して、基準期間の課税売上高が5千万円以下である課税期間については、簡易課税制度選択届出書を所定の期日までに提出することで、課税仕入れに係る消費税額を、実際の金額ではなく、課税売上に係る消費税額を基礎とした簡便な方法により計算することが認められます。これを簡易課税制度といいます。
  • 免税点制度及び簡易課税制度の主な適用制限

    免税点制度や簡易課税制度の対象となる事業者であっても、下記に該当する場合は、その適用が制限されます。

 

課税事業者を選択した場合 課税事業者選択届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(提出日の属する課税期間が事業開始日の属する課税期間の場合は、その課税期間)から2年間は課税事業者が強制適用されます。
特定期間(*2)の課税売上高及び給与支払額が1千万円を超える場合 その課税期間は課税事業者となります。
新設法人(*3)に該当する場合 基準期間がない事業年度に含まれる課税期間は、課税事業者が強制適用されます。
特定新規設立法人(*4)に該当する場合 基準期間がない事業年度に含まれる課税期間は、課税事業者が強制適用されます。
上記①、③及び④により課税事業者が強制適用される課税期間中に調整対象固定資産(*5)の課税仕入れを行い、かつ、その仕入れた日の属する課税期間について原則課税で申告した場合 調整対象固定資産の課税仕入れを行った日の属する課税期間の初日から原則として3年間は課税事業者が強制適用されます。また、この期間中、簡易課税の適用を受けることもできません。
課税事業者が、原則課税で申告する課税期間中に、高額特定資産(*6)の課税仕入れを行った場合 高額特定資産の課税仕入れを行った日の属する課税期間の翌課税期間から、高額特定資産の課税仕入れを行った日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、課税事業者が強制適用されます。また、この期間中、簡易課税の適用を受けることもできません。
課税事業者が、原則課税で申告する課税期間中に、自己建設高額特定資産(*7)に係る建設等費用の課税仕入れ(免税事業者である課税期間、簡易課税の適用がある課税期間に生じたものは除く)の累計額が1千万円以上となった場合 自己建設高額特定資産に係る建設等費用の課税仕入れ(免税事業者である課税期間、簡易課税の適用がある課税期間に生じたものは除く)の累計額が1千万円以上となった課税期間の翌課税期間から、その建設が完了した課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、課税事業者が強制適用されます。また、この期間中、簡易課税の適用を受けることもできません。
  • (*1) 基準期間:個人事業者についてはその年の前々年、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいいます。
  • (*2) 特定期間:個人事業者についてはその年の前年1月1日~6月30日、法人については、原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間をいいます。
  • (*3) 新設法人:その事業年度の基準期間がない法人のうち、その事業年度開始日の資本金が1千万円以上の法人をいいます。
  • (*4) 特定新規設立法人:その事業年度の基準期間がない法人(新設法人を除く)のうち、5億円超の課税売上高を有する事業者により直接または間接に支配(発行済株式等の50%超を保有)される法人をいいます。
  • (*5) 調整対象固定資産:棚卸資産以外の資産で建物、構築物、機械装置等のうち、その税抜金額が100万円以上のものをいいます。
  • (*6) 高額特定資産:棚卸資産及び調整対象固定資産のうち、その税抜金額が1千万円以上のものをいいます。
  • (*7) 自己建設高額特定資産:棚卸資産もしくは調整対象固定資産として自ら建設等をした高額特定資産をいいます。

【注】上記は概要になりますので、詳細は法令等をご確認ください。
 
これらの他、相続、合併、分割があった場合なども注意が必要です。
適用制限が増えて、どんどんややこしくなっているように思います。いっそのこと免税点制度も簡易課税制度もなくして、全員課税事業者・原則課税にしてしまえばすっきりするのにな~なんて思うこともあります。もちろんそんな短絡的な話ではないのでしょうが。。。いずれにせよ、このような改正に対応できるよう日々勉強が必要です。
 

  • ファイナンシャルビジネスサービスAグループ
  • 税理士
  • 岩崎 貴子

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